健康観雑感


 お気持ち爽やかに新年を迎えられたことと思います。
年頭にあたって、これからの医療について考えてみたいと思います。
 昨年は不況の底が見えたといわれましたが、人々の生活はまだまだ厳しいというのが実感ではないでしょうか。さらに、健保本人の窓口負担が2割から3割に増えたことも大きく影響しているように思えますがいかがでしょうか。どうやら、一般の人々にとって身体の調子がすぐれないからといって気軽に受診できるという状況から遠ざかりつつあるようです。本来はそのための国民皆保険制度のはずなのですが。政府は「財政建て直し」を大義名分とし、手っ取り早いところから収支を「健全化」しているようです。国家財政の建て直しはもちろん大切です。しかしこれには長期的展望で取り組む必要があるのです。

 話は変わりますが、日本の少子高齢化が問題なのは、高齢化社会への変化が約25年という短期に起こっているからです。これが100年かかって徐々に変化したとすれば大きな問題にはならなかったでしょう。社会がこの変化に無理なく対応する余裕があるからです。地球全体の人口はまだまだ増え続けていますから、エコロジー(生態学)の観点からは、この緩やかな人口の減少はむしろ歓迎されることなのかもしれません。

 さて、話を戻しましょう。
財政再建が急務だからといって単年度で収支をあわせても、その後後遺症が出るようでは応急処置としかいえません。その最たるものが先にふれた健保本人負担の増加です。不景気という環境の下では、家計の中での医療費という支出を抑えるため、たしかに一時的に受診抑制が働き、医療費の「節約」になります。
 しかし長期的にみたらどうでしょう。軽い症状の段階で受診していたら、その時は家計にとっても国にとっても医療費はかかります。しかし、初期段階での医療費は、重症化した場合のそれに比べれば、結果的にはかなり少なくて済むはずです。しかも重症化したした場合、仕事を休んだり、さらには家族も仕事を休まざるをえない事態になることもあります。これは本人の家計にとっても国にとっても大きな出費、収入(税収)減となります。税収が少ないから消費税率を上げる、住宅ローン減税等の減税措置を取りやめる、保険料を上げる、年金の支給年齢を引き上げる、これらは対症療法つまり持続性のない応急処置ではないでしょうか。
 これに国が社会保障費を「節約」して、国民にとっての老後の保障が後退するとなれば、長い目でみてはたして財政の建て直しが進むでしょうか。現在、景気が冷え込んでいるのは、その原因の多くはデフレと需要の減少のためです。家計への負担(支出)増が購買意欲を低下させることは、火を見るよりも明らかです。同様に、保障が後退すれば万一への備えとして消費よりも備蓄が進むことも当然です。しかもその間に、国民が自らの健康にとって取り返しのつかない痛手を被ってしまったら、再建どころではなくなってしまいます。これは回復が難しい点で、森林伐採等による環境破壊で生態系を壊すのとよく似ていませんか。
 国は、10年後、20年後の国民の生活や健康を考えて政策をとるべきだと思います。突拍子もない意見ですが、消費税を5%から3%に下げてみてはいかがでしょうか。これだけでも消費意欲は格段に上がるはずです。一見消費税としての税収は減るように思えますが、消費量が増えれば消費税収の総額は増え、さらに事業税や所得税が増えますから、トータルでの税収は下がらないどころか、増えると考えられます。また、定期検診や予防等、自らの健康への投資にも保険料等で優遇措置をとってはいかがでしょうか。これは疾病の早期発見や疾病の軽症化を促進し、中長期的には必ず医療費の抑制になると思いませんか。
 今、青葉歯科では、歯周病の管理のため、2、3ヶ月毎に来院される方が全体の約半数です。この状況をみても、皆さんがいかに健康管理に熱心かがわかります。歯を抜くという嫌な思いはできるだけしたくない、なるべく長く自分の歯でいたい、こういう強い気持ちを日々感じています。その思いにできるだけお応えできるよう、私たちも研鑽を積んでいきたいと思います。こういう国民の気持ちに報いるよう、国にも、国民生活のよい方向への誘導策を真剣に考えてほしいものです。
 最後になりましたが、今年一年、皆様が健やかに日々を送られますよう、お祈りいたします。

04.01
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