矯正で抜歯をするのはなぜ?


 歯列矯正のために青葉歯科に通院する方はかなり多く、特に土曜日などは、1日のうち8割以上がこの処置になります。
 土曜日など、矯正治療の多い日は、削ったりという歯科特有の「痛み」を伴う処置が少ないため、診療室の中がいつもよりリラックスした雰囲気になるのは好ましいことです。
 でも、歯列矯正のためにやむをえず抜歯をせざるをえなかった方が多いのも事実です。
 顎の大きさに対して歯が大きい場合、逆にいえば歯の大きさに対して顎が小さい場合、その顎の中にきちんとしたかみ合わせをつくりながら歯を並べるには、どうしても並びきらない歯を抜かざるをえないということは理解できますよね。
 でも、「歯並びを外側に拡げれば、抜かなくても並ぶのでは?」と疑問に思ったことはありませんか。
 実際には、歯並びを横方向に拡大するというという処置を行うこともあります。ただし、上下の歯のかみ合わせもそろえなくてはなりませんから、自由に拡大できるというわけにはいきません。
 歯列矯正において抜歯が必要な理由を挙げてみましょう。
* 最終的に上下の歯を、なるべく一直線上に並べるため
 かむ時に歯に加わる力は、できるだけ歯に対して垂直に加わるほうが望ましいのです。なぜなら、歯に対し横方向の力は歯を倒そうとする力になります。
この状態では、かむ力(咬合力)も低下する上、位置の安定がえられません。
歯を抜かずに無理して並べると、歯並び全体が外側に開いた状態になり、上下の歯が軸がずれた状態でかみ合うようになります。
* 筋肉のバランスのとれた所に歯を並べるため
 もともと歯は、筋肉のバランスの上に並んでいます。
舌は歯列を内側から支え、唇や頬は外側から支えていて、この力が中立な位置に歯は並んでいます。スペースの足りない部分に無理やり歯を並べると、唇や頬から過剰な力が加わったり、また唇が閉じにくくなって、その後の歯列が乱れる要因になります。
* 日常的に口が閉じられる状態にするため
 上と同じ理由で、常時唇が開いた状態が続くと外から歯列を支える力が不足し、その後歯が前に出やすくなります。これがさらに唇を閉じにくくするという悪循環が生まれます。
* 口元の出た感じをやわらげるため
 これも同じ理由ですが、特に日本人はもともと口元が出ている人の割合が高く、歯を抜いて全体を引っ込めたほうが口元が引きしまって見えます。特に口角(口の左右の縁)がしまっていると、顔全体が温和な印象になります。(モナリザの微笑み)

 なお、「歯を抜くとかむ能力が低下するのでは?」との懸念もあります。
 でも、もともと歯並びが乱れている場合には、先に述べたように上下の歯が軸がずれていたり、すれ違っていたり、また全くかみ合っていないという場合がほとんどです。したがって、ある歯を抜いても存在している歯がいい状態でかみ合っていれば、かむ能力としては逆に高くなるものなのです。ちなみに抜歯するのは、最もずれの大きい歯ではなく、最も影響の少ない歯(根が短い等)なのです。
 だからといって、安易に抜歯を勧めているわけではありません。こちらも悩んだ挙げ句に抜歯を決断することが多いのです。歯を抜かずに歯並びが治ればそれにこしたことはありません。
2005 3月
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