歯科用CTについて

2012年8月



 今年2月より、歯科用のCTを導入しました.
 7年ほど前に導入したデジタルX線装置と外観はほとんど変わりませんので、X線撮影室に入った方もおそらく気づかれなかったのではないでしょうか.
医科の分野ではCTはかなり普及していますが、歯科ではまだまだ一般的とはいえません.
 ちなみに、CTとはコンピューター断層撮影法(Computed Tomography)の略です。身体にエックス線を照射し、通過したX線量の差をデータとして集め、コンピューターで処理することによって身体の内部を画像化する検査です。X線には、肺のように空気のたくさんあるところは通過しやすく、骨は通過しにくいという性質があります。そのため、身体の組織や臓器によってX線の透過性(通過しやすさ)は異なり、この差を利用して画像を作りだすことができるのです。CT検査によって病変が診断できるのは、X線の透過性が病変と正常部位とで異なるからです。
 さて、コーンビームCTと呼ばれる歯科用のCTは、医科用で一般的に使われているヘリカルCTに比べ、より細密な画像(0.1mm単位)が得られます。撮影範囲はあごの周辺に限定されますが、あご周辺の状態の描写に特化したシステムになっていますから、映像も鮮明で、撮影時間も短く、当然のことながら被曝線量を大幅に低く抑えられます.
インプラントの手術を多く手がける医院で導入することの多い歯科用CTですが、当院での導入目的はそれとはやや異なります.
 もちろん、インプラントの処置を安全に行う上で、とても有効な機器であることに違いありません.
 歯科でのCTの撮影は、実はそう頻繁に行われるわけではありませんが、ただ、どうしてもCTでないと状況把握が難しい場合があることも事実です.
 たとえば、まだ口の中に現れていない親知らずの抜歯の際、その下にある神経や血管との位置関係が問題となります.
 また、歯周病が進行して骨が吸収(溶けてなくなっている)している部位を正確に把握したり、あるいは歯の神経の処置をする際、根がどういう方向に曲がっているか、根のどの部分がどういう方向に割れているかといった細かな情報を正確に把握するのに、CTの撮影は有力な手段となります.
 この撮影により、歯の神経や歯槽骨の形態を立体的に把握できるため、これまで手探りで行われていた処置をより確実に行うことが可能となります。
 もう少しわかりやすく説明してみましょう.
 普段よく目にするあご全体のX線写真は、パノラマX線写真といいます.これは、歯を含めたあご全体を外側から内側方向に撮影した写真です.この方法では、上下、左右の状況の把握は可能ですが、2次元で表現した画像のため、外側から内側方向の奥行きを把握することは困難です.
 そのため、小さなX線写真(デンタルX線写真)をX線の照射方向を変えながら撮って奥行きを推測したり、あるいは勘に頼る場合もあります(事実、これまで長い間そうしてきました)。
 CTでは、前後、左右、上下という3方向からの断面の画像が得られ、また見たい断面を連続的に移動したり、断面の角度を自由に変えて3次元的に把握することが可能です.
 しかも、顎骨(あごの骨)の全体像を3次元画像で自由な方向に回転させてモニターに映し出すことも可能です.これは、あたかも実際の顎骨を手で持ってあらゆる方向から眺めるような画像で、一般の方にとっても興味深いものです.
 これほど便利な機械ですが、気をつけなくてはならないこともあります.
 放射線量が少なくなったとはいえ、撮影には少なからず被曝が起こります. 本当に必要なときの撮影に心がけなくてはなりません.
 また、「モニターを見て患者を診ない」医師が問題になりますが、CTでも同じことがいえます.
 最新の検査機器が使える時代でも、やはり聴診器は必要です.
 常に患者さんの心をモニターできる、そんな歯科医でありたいと思います.

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