歯が割れた!

2017年3月



 エナメル質---歯の最も外側の歯質をこう呼びますが、ここは人体の組織の中で最も高い硬度を誇っています。
 どのくらい硬いかというと。  
 「モース硬度」という硬さの基準があります。
 異なるものをこすり合わせ、傷がついたかどうかで硬さを決める、とても原始的な方法です。エナメル質はモースの硬度7です。
 ちなみに、モース硬度1はチョーク、最も硬い10はダイヤモンドです。 
 エナメル質のモース硬度7は水晶と同じくらいの硬さです。
 一方、鉄や真珠の硬さが4、ガラスが5です。
 ただ、「硬い」と「強い」は別で、たとえばガラスは硬いけれど割れやすい、ゴムは柔らかいけど割れにくいですね。
 硬くても割れやすい、あるいは壊れやすいものは、脆い(もろい)という表現をします。
 力を加えたあと、力を抜くと元の形に戻る、これを「弾性変形」といいます。
 これに対し、ある一定上の力を加えると、力を取り除いても元の形に戻らなくなりますが、これを「塑性変形」といいます。さらに力を加えると、徐々に破壊が起こります。
 ガラスの場合、この塑性変形がほとんど起こらず、力を抜くと元に戻るか、あるいはそれ以上の力を加えて破壊するか、どちらかなのです。これが「脆い」という性質ですが、エナメル質もややこれに近い性質をもっています。
 歯に力が加わっても、それが弾性変形の範囲内であれば歯は割れません。
 では、弾性変形の上限を下げる、つまり割れやすくなる要因は何でしょうか。
 最も大きな要因として、歯の神経=歯髄を取ること(抜髄といいます)です。
 鎮痛ややむを得ない目的で抜髄すると、歯髄から歯質への水分の供給が行われなくなります。生きている樹木と木材の違いと言ったらわかりやすいでしょうか。抜髄した歯は神経のある歯に比べ、極端に脆くなります。そのためそれを防ぐ目的で、力のかかる部分全体を金属等で完全に覆ってしまうという方法をとることがあります。しかしこの方法のデメリットは、削除する歯質の量が多くなることです。歯は、残っている歯質が少なくなるほど寿命が短くなる傾向がありますから、ある意味この方法はジレンマを抱えていることになります。
 次に、むし歯が進行した場合です。むし歯が進行して抜髄になれば、先に説明した通りになります。しかしそこまで至らなくても、むし歯は、表面の硬いエナメル質を超えて進行すると、石灰化度の低い象牙質で加速度的に進行し、横方向に広がります。ある日突然陥没したように歯が欠けるのはこのためです。
 その他、抜髄した歯を補強するため、歯の内部にポスト(あるいはコア)と呼ばれる金属等の心棒を入れることがありますが、ここに縦方向に力が加わった場合、皮肉にも楔効果で歯が割れたり、横方向から力が加わりテコの作用で割れたりすることも少なくありません。
 さらに私たちは、熱い飲食物では90℃近い温度のものや、氷等冷たいものでは0℃くらいのものまで口に入れます。
 特に前歯には、その温度がダイレクトに伝わります。
 この温度変化による膨張と収縮に歯質が耐えきれなくなると、表面に亀裂が入ります。成人のほとんどの前歯にはこの亀裂が見られますが、亀裂の多くは温度変化の影響を受ける表面のみに見られ、内部にまでは達していません。
 しかし、この温度変化が頻繁だったり、年齢を重ねこの亀裂が蓄積したり、歯の弾力が失われてくると、歯が大きく割れることがあります。
 また、歯の破折の原因として最近注目されているものに、abfraction=アブフラクション(摩耗と破折を意味する造語です)があります。
 歯ぎしりや過度の歯にかかる力は、歯と歯肉の境界に集中します。ちょうど地震による高層ビルの揺れで、1階部分に応力が集中するのに似ています。
 
 さて、以上はの割れる原因について触れましたが、これを予防するには、以下のことを心がけましょう。

  • 歯の抜髄をしない
  • むし歯を放置しない
  • 熱いものと冷たいものを短時間で交互に口に入れることを避ける
  • 歯ぎしり、食いしばりを避ける
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