新型コロナウィルスCOVID-19と鼻呼吸

2020年4月



 昨年末より中国で感染が始まり、あっという間にパンデミック(世界の複数の地域で同時に大流行すること)の状態になり、現在も感染が広がっている新型コロナウィルス(COVID-19)。

 社会的にいろんな作業や手続き等が集中する年度末に、流通、会合を始め社会全体の動きがマヒ状態に陥りました。

 この文章を書いているのは3月下旬ですが、「院内だより」として待合室に置かれるのが5月から、ということで、その頃感染拡大が終息(収束?)に向かっていればよいのですが。

 まだまだ不明なことが多いこのウィルスですが、私たちは必要以上に恐れることなく、かつ可能な予防策はしっかり行うことが大切です。

 でも、正体のわからない、目に見えない相手に対し、この「適切に行動すること」こそが最も難しいのです。

 ただ、いくつかわかってきたこともあります。

 

 ある感染者が、その感染症に対する免疫を全く持っていない集団に入ったとき、直接感染させる平均の人数を「基本再生産数」と呼びます。これが1より大きければ感染は拡大し、1未満になれば感染は終息に向かうことになります。

 一方、感染症の流行が進行中の集団のある時点において、1人の感染者が生み出した二次感染者数の平均値を「実効再生産数」と呼びます。

 COVID-19の場合、日本では前者は2〜3であるのに対し、後者は1です。

 基本再生産数2というのは、2倍ずつ増えますから指数関数的な拡大を意味します。

 計算式に当てはめると、基本再生産数3の場合、集団免疫によって感染拡大が停止するまでに、67%の人が感染する計算になるそうです。

 つまり、日本国内で実際に感染が広まっている速さを示す実効再生産数は、今のところ、ウィルスの持つ感染力を示す基本再生産数を下回っているということです。

 これはひとつには、COVID-19の感染は「密集」「密閉」「密接(かなり近づいて会話や食事をすること)」を避けることでかなり予防できるということで、日本人はこれを実践しているからかもしれません。都会の満員電車内での感染が比較的少ないのは、短時間でドアが開き、しかも会話をしている人が少ないからではないかとの推測もされています。でも油断禁物です。

 ちなみにCOVID-19は「新型コロナウィルス」ですが、「新型」ではないコロナウィルスには、実は一般の人でも年に1,2回は感染しているそうです。

 今回の感染は人類にとって大変な災いですが、人類に襲いかかるウィルスはCOVID-19だけではありませんから、今回のパンデミックは正しい衛生観念を再確認する機会でもあるのです。

 まずは、きちんとした手洗いは必ず実践しましょう。

 国立モンゴル医学科学大学客員教授の岡崎好秀先生は、「鼻呼吸は天然のマスク」と表現しています。

 以下、西日本新聞に掲載された記事を要約してみます。

 「冷たく乾いた空気を鼻から吸っても、気管に届く頃には体温近くまで温度が上昇し、かつ湿度80〜85%にまで加湿され、さらには免疫機能も作用します。このため、乾燥に強く湿度に弱いウィルスの生存率は低下します。

 ところが、口から空気を取り込む口呼吸では、外気はほどんどそのまま気管に達しますから、ウィルスが肺に到達しやすくなります。さらに、冷たく乾いた空気は、気管の内面にある繊毛の動きを抑制するため、ウィルスの排出もしにくくなります。」

 先生は、口呼吸の改善のために「あいうべ体操」を勧めています。

「あいうべ体操」は、福岡の今井一彰先生が提唱する口腔周囲の筋トレです。

 「あー」「いー」「うー」「べー」と、大きく口と舌を動かす「あいうべ体操」。 

 1日30セット(10回ずつ分割しても可)やれば、舌の筋肉が鍛えられて舌先が上顎に付き、自然と鼻で呼吸できるようになります。体操の刺激によって出る唾液で口の中は潤い、舌や口輪筋などの筋肉を動かすことで、口周りやのどの体温も上がります。さらに口角が挙がる効果もあります。

 前号でご紹介したように、院長も実践し、皆に勧めています。

 無理なく、継続することでウィルスに負けない体作りをしましょう。



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