口の中の痛み

2021年3月



 体のどこかに痛みがあると、多かれ少なかれ日常生活に支障をきたします。
感覚としての痛みは、侵害受容性感覚と呼ばれます。
これは、その刺激の原因が、自身の体に害があることを知覚させる感覚という意味で、この感覚は自身を守るためにとても重要な感覚なのです。
痛みを感じている時は、その痛みがなければ生活がどれほど快適かと思いますが、とんでもありません。
痛みを知覚することで、その痛みの原因を取り除こうと行動したり、そこから回避することで自分自身を守ることができるのです。
口の中の痛みで一般的なものは、むし歯によるもの(知覚過敏を含む)、歯周病によるもの、そして傷や口内炎によるものではないでしょうか。
この中で、歯周病と口内炎の痛みは比較的痛みの場所を正確に把握しやすいのですが、むし歯の場合は、その歯を特定しにくいという特徴があります。
それは、前者の場合、感覚を伝える神経とそれを知覚する中枢とが一対一でつながっているのに対し、後者では感覚神経の何本かが一つに合流して中枢につながっているため(収斂=しゅうれんと言います)、中枢が痛みの源を正確に特定しにくいからです。
むし歯では多くの場合、前後の1、2本、あるいは上下を間違えることもあります。
(左右は感覚神経が完全に分かれているので間違えることはありません)。
また虫歯の痛みで特徴的なのは、初期には冷水痛といって、冷たい刺激で痛みを感じます。いわゆる「しみる」という感覚です。体の他の部位での炎症ではこの冷水痛はほとんどありません。炎症がこれより進行すると、体の他の部位と同様、温水痛といって、熱い刺激で痛みを生じるようになります。皮膚のどこかに炎症がある場合、お風呂に入るとその部位がジンジン痛みますよね。これは、熱により痛み物質であるヒスタミンやプロスタグランジンが作られるからです。
歯科では、この冷水痛があるうちに処置することが大事です。処置も簡単で、しかもあまり痛い思いをせずに不快症状を解決することができます。
これより炎症が進むと、麻酔下で歯髄(歯の神経)を除去する可能性が高くなります。
 次に、普通に上下の歯を噛み合わせて痛みが生じる場合、少なからず歯根膜炎(歯根膜=歯根を取り囲む厚さ0.2〜0.3mmの緩衝組織兼センサー)が起こっていると考えられます。その原因として、歯髄の炎症が歯の外部まで及んだ場合、あるいは歯周病等、何らかの原因でその部分だけ歯が浮き上がった場合が考えられます。
 口の中の炎症の場合、「安静にしてください」とはいうものの、実際にはそれは容易ではありません。なぜなら、口を全く使わずに日常生活を送ることは不可能だからです。
 患部にできるだけ刺激を加えないよう注意し、早めに受診することをお勧めします。

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