西村秀一著「新型コロナの大誤解」から

2021年8月



 前の見えない新型コロナの猛威ですが、私たち人類はこれまでも多くの感染症に見舞われ、そしてその災いを乗り越えて来ました。
 そして今私たちがすべきこと、しなくてもいいこと、してはいけないこと等、国立病院機構仙台医療センターウィルスセンター長の西村秀一氏の著書「新型コロナの大誤解」から、一部抜粋してご紹介します。
 ちなみに、()内は院長の解説です。

*新型コロナ(以下COVID-19)は「空気感染(飛沫感染も含む)」である。
閉鎖された狭い場所では、パーテーションなどはむしろないほうが安全である。
(パーテーションがあると、直進する飛沫は防げるかもしれないが、結果的には空気の流れを遮断し、ウィルスの局所的な停留を多くすることになる。感染予防には空気の流れが大事。)

*新型コロナウィルスは皮膚からは感染しないので、接触感染は気にしなくて良い。
消毒のやりすぎは効果がないどころか、かえって害。
(COVID-19は呼吸器系ウィルスで、皮膚のバリアを通過することはありません。アルコールによる過度の消毒は皮膚を角質化させ、結果バリア機能を破壊し、かえって細菌やウィルスの侵入経路を作ることになります。)

*感染リスクが最も高い行動は、ウィルスを肺まで吸い込むこと。
  乾燥した環境だと飛沫が小さくなり、吸い込みやすくなる。
 (冬に重症化する人が多くなるのはそのため。飛沫が小さくなると気管支や肺にまで達しや   
  すくなります。大きい飛沫はほとんど鼻腔や喉までにしか届きません。)

*たった1回の咳では、すぐに感染するような量のウィルスは出ない。
(スパコン富岳の画像で見えたのはエアロゾル。感染者の咳でも、そのうち生きているウィルスは1/100から1/1000程度。屋外ならばさらに拡散し、減少します)。

*手洗いよりうがいが大切。自分の感染予防のみならず、他者にうつさない効果も。
(床に落ちたウィルスは気にする必要なし。吸い込むエアロゾルの粒子が大きく、喉までに留まっているウィルスはうがいで除去できます。)

*意識的に空気の流れを作ることが必要。
(当院は、24時間換気システムを導入しています)

*PCR検査は、やみくもに多くの人にすれば良いというものではない。定量化が重要。
(PCR検査は遺伝子の一部を見る検査で、死んだ((不活化した))ウィルスも検出します。つまり、偽陽性が出る可能性があるということです。これに全て対応していては医療崩壊を起こします。要は、ウィルス量が増えているかどうかを把握するのが重要。)

*きちんとした不織布マスクであれば、日常生活には十分の性能を持っている。一方、ウレタ 
ンマスクの予防効果はほぼゼロ。マスクは密着性が命。フェイスシールドやマウスシールドでは何も防げない。風が吹いていて、人が密になっていない戸外ではマスクは不要。

*駅の階段など人混みの中では、マスクをしていても走ってはいけない。満員電車でクラスタ 
ーの報告がないのは、把握しようがないのと、マスク着用と大声で話す人がいないため。
(上り階段では息が弾み、深呼吸になりやすい。エスカレーターでは、前の人が咳をするとその空間に後の人が短時間で移動するため、注意が必要です。)

*バイキングや大皿料理は問題ない。食べ物からCOVID-19は感染しない。
(問題なのは密になることです。)

*レジのお金の受け渡しに感染リスクはない。実生活で、物の表面には生きたウィルスはいな 
い。

*日本の感染者数が欧米に比べ少ない理由は、行動様式や生活様式による。
(日本人は欧米人に比較し、ハグやキスといった直接的な接触行為が少なく、またパーティー等、人が密に集まる習慣が少なく、また日常的にマスクの着用に慣れているためと考えられます。)

*子どもは、COVID-19に感染しても重症化しない。大げさな規制は必要なく、むしろ子どもたちの正常な生育を妨げる。
(子どもへの感染経路としては、最初に大人の間で感染が起き、それから家庭内感染で子どもにうつされるケースがほとんどです。規模にもよりますが、子どもが学校で他の子どもからうつされるケースは稀です。ただ、市中流行が大きくなればこの限りではありません。いずれにしても、子どもは重症化せず、風邪程度の症状ですんでいます。)



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