高齢者の健康

2022年11月



2021年の日本の平均寿命は男性が81.47 年、女性は87.57年でした。
一方で、介護を必要とせずに生活できる健康寿命(2019年)との差は、男性8.79年、女性12.19年でした。
女性が男性より長寿である一方で、介護の必要な期間は男性より3年以上長いという事実は重要かもしれません。
女性が配偶者を失ってから、介護されながら男性より3年以上長い介護を必要とする生活を送るわけですから、国はこの介護支援を早急に充実させる必要があります。
さて、まず女性のほうが長寿である要因として、主観を許していただくならば、
 ・出産という大きな身体的負担に耐えられる適応能力
 ・妊娠中、胎児を守れる身体構造
 ・よく喋る
 ・生活する上の基本的な実務=家事(掃除洗濯炊事)をルーティーンとしてこなしている
といったことが挙げられるように思います。
 よく喋ることで言語中枢が刺激され、家事をすることは段取りで脳を刺激し、さらに手足を動かすことでも同じく脳への刺激が行われます。
 特に我が国の男性の場合、定年時に生活が大きく変化し、それまで馴染みの薄かった家事への適応という事が大きなネックになっているように思います。その変化に体も気持ちも適応できにくいのではないでしょうか。
 職業を通じて社会と繋がっていた生活から、いわば「肩書きのない」生活へのソフトランディングができるかどうかが重要だと思います。
そこでは、価値観の転換も必要になるでしょう。
言い換えれば、「人としての生きがい」の見つけ方かもしれません。
趣味とか、そういった楽しみがあり、それを勤しむことで充実した毎日を送ることができれば幸いでしょう。
ただ、私自身のこととして考えた場合、音楽鑑賞やガーデニングが趣味ですが、おそらくそれで一日中過ごせるようには思えません。あくまでも、趣味だから楽しいような気がします。
私自身は、何か社会と関わることで気持ちが満たされるような気がします。やはり、「肩書きのある」生活への未練でしょうか(笑)。
もちろん、その関わり方は現役時代とは違う方法にはなるでしょう。
後進の指導や教育(現在も歯科衛生士の専門学校で非常勤講師として生理学を教えています)、あるいは学童保育のようなものに携われれば、とも思っています。
もちろん、若い時のようなエネルギッシュな行動は無理ですが、「歳の功」のうまい使い方をしていければと思います。
社会との関わり方は、人それぞれです。
同年代との関わり方も大事ですが、高齢者には異世代、ことに青少年との関わり方が重要かもしれません。自分とは違うものの見方、感じ方を知ること、そして何より若さを追体験させてくれるでしょう。そういう価値観の違いを楽しめるような、柔らかい頭脳を持ち続けられたらいいでしょうね。好奇心を持ちつつ、穏やかな眼差しでいたいものです。
さて、人間働き盛りには、いろんな意味で競争しながら生きていたように思います。それは、向上心の裏返しとも言えるかもしれません。
高齢者になると、そういった競争からは解放されるかもしれません。
一方で、老いてくると、外見的には若い頃のような美しさは望むべくもありません。
では、若い頃の美しさとはなんでしょうか。
容姿が美しいこと、目が輝いていること、肌に緊張感や艶があること、反応が素早いこと、動作が身軽なこと、声が瑞々しいこと等。
高齢になれば、その意味では若い人たちには到底敵いません。
それが老化というものです。
では、老化はネガティブなことばかりでしょうか。
年齢を重ねたからこその味わいや深みが出るのも、偽らざる事実です。
例えば、俳優でも、若い頃よりある程度年齢がいってからのほうが味わい深さが出る人も少なくありません。
クルマでいえば、二十歳そこそこの若い人が高級車に乗っていてもあまり釣り合いが取れませんが、シニアといわれる年代の方のほうが、乗っていて様になっているような気がします(多分に個人的感覚かもしれませんが)。
また、若い時にはわからなかった世間が少しわかるようになったり、目先のことで一喜一憂しなくなったり、かつては理解できなかった詩や俳句、短歌の意味が不思議にわかったりと。
ということで、年をとることも決して悪いことばかりではありません。
人生をより深く楽しみましょう。
それにはまず健康です。
正しい食事、適度な運動、十分な睡眠、そして精神の健康が維持できればいいですね。
これらはそれぞれが密接に関係しています。
具体的な実践編については、またの機会に触れたいと思います。
明日もまた、いい日になりますように。

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