マスクと口呼吸

2023年1月



新型コロナが世界中に蔓延してからもうすぐ3年になろうとしています。
一時期よりは重症者の数は減っているものの、まだ終息の気配は見られません。
一方で、歯科医院でのクラスター発生のニュースは未だ聞かれません。医療空間の中ではエアロゾル等、感染リスクは高いほうだと思いますが、口腔外バキュームと頻回のうがい、そして徹底した滅菌等が奏功しているのではないかと考えています。
世界のニュースなどを見ていると、マスクなしで行動している人が多いことに驚きます。
日本では屋内ではまだマスク着用が一般的です。ある意味、とても律儀な国民性だと実感します。
一方で、エチケットとしてのマスク着用、あるいは人の目を気にしてのマスク着用という意味合いもあるようです。
また、マスクをしていれば安心という心理も働いているかもしれません。
マスク着用で気をつけなければならないことがあります。
知らず知らずに、口で呼吸をしている場合が多いということです。
日常生活における正しい呼吸は鼻呼吸といい、鼻を通して行われます。
成人は1日に、約1万リットルの空気を吸い(吸気)、同量を吐き出します(呼気)。量が多い分、いろんなものを鼻から吸い込むことになります。
鼻を通しての吸気は、ホコリやゴミ、細菌やウィルスを除去するフィルターを介して行われます。
まずは鼻毛で、このフィルターは大きめのホコリやゴミの侵入を防ぎます。
ホコリやゴミといっても、そこには当然ウィルス等も付着していますから、これらをブロックすることはとても大事な機能です。
次に、鼻腔粘膜から分泌される粘液が細菌やウィルスを吸着します。そして吸着されたものは、鼻腔から喉の奥にかけてびっしり生えている繊毛(細かい絨毯のような毛)の動きで、痰(たん)として体外に排出されたり、胃に送られて胃酸で処理されます。
その他、吸気が鼻腔を通過する間に鼻腔粘膜に張り巡らされた毛細血管により加温と加湿が行われます。喉の奥では体温近くまで温度が上昇し、湿度も80〜85%にまで高められます。これにより、先ほどの繊毛の運動が活発になり、異物排除が進みます。逆に、乾燥した冷たい空気を吸い込むと、繊毛の運動が弱まり、風邪やインフルエンザ、あるいはアレルギー性疾患に罹患しやすくなります。
さらに、鼻腔や副鼻腔の粘膜からは一酸化窒素が分泌されますが、これは血管や気道を拡張させる作用があります。つまり、より効率的に肺から酸素を取り込むことができるのです。
つまり鼻呼吸は、ターボ付きの、加湿加温機能を備えた高性能な空気清浄機と言えます。
口呼吸では、このような機能は働かず、外気はほとんどそのまま肺に送られてしまいます。
マスクをしていると、空気を吸い込む際の抵抗が大きくなり、鼻呼吸だけでは呼吸がしづらくなるために、無意識に口呼吸をする傾向があります。
鼻炎の方も同様で、鼻呼吸がしにくいときに口呼吸の習慣が身につくと、鼻呼吸ができるときでも口で呼吸することが多くなるようです。
マスク着用時に口呼吸をしていることに気づいたら、鼻呼吸に改めるよう、意識してください。
この場合、吸気に抵抗があっても、胸郭を使う胸式呼吸より、横隔膜を使う腹式呼吸のほうが、より楽に呼吸できますから試してみてください。
余談になりますが、いびきも含め、睡眠時に口呼吸をしてしまう傾向があるのも事実です。
それを前提に、しっかりブラッシングをし、うがいをして、口腔から咽頭に付着したウィルスを減らしてから床につくという習慣を励行するのも大事な感染予防策といえます。
いずれにしても、新型コロナウィルスに関しては、わからないことが多いのも事実です。
日本感染症学会は、現時点で仮に感染したとしてもその多くは軽症〜中等症の上気道(鼻から喉頭まで)の感染症で終わるとみて、「このような症例に対してはインフルエンザ、風邪に準じた対応になる」との見解を示しています。
免疫力を高めるには、まず空気や食の取り入れ口を良好な状態に保つことが大前提です。いわば、「鼻呼吸こそ天然のマスク」。
口を病の入り口にしないよう、誰でもいつでもできる予防策で免疫力を保ちましょう。

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