歯科医院のキャンセルについて

2026年7月



「医は仁術」と言われます。
 医療の場では、慈しみや思いやりの心で患者に接するように、という意味だと受け取っています。もちろんこれは医療従事者としての根本的な心得です。
 では、医療機関の利益はどう考えたら良いでしょう。
 一番の目的は、良い医療環境への投資です。
 良い医療環境とは、皆さんが安心して良い医療を受けられる状況、条件のことです。
 具体的には、老朽化した設備の更新、日進月歩の医療機器の購入、最新の医療情報の収集、スタッフのスキルアップ、そしてスタッフの給与等です。
 医療機関にとってスタッフは人財であり、スタッフが安心して働くことができなければ、皆さんに良い医療は提供できません。
 一方で日本の保険診療の場合、医療行為の評価は国が定めた診療報酬で決められています。
 昨今諸物価が上がっていますが、保険医療機関では、それを理由に医療費を上げることはできません。以下の表は、代表的な歯科治療費の国際比較です。


(Quintessence Publishingより引用)

日本の保険診療の場合、患者本人の窓口負担はこの金額の1割、2割、3割になります。
 この表からわかるように、国際的にみて日本の歯科診療報酬はかなり低く抑えられています。
 また、医療提供する側の経験年数や技術の優劣は考慮されていません。
 このあたりは今後の大きな課題です。
 それでも、国民皆保険制という日本の保険制度は世界的にも優れた保険制度であり、海外からは依然注目されています。この制度は未来にわたり、私たち日本人は守らなければなりません。
 ただ現実問題として、この状況の中で歯科医療機関は、前述の目的のために利益を上げなくてはなりません。
 意外に思われるかもしれませんが、低診療報酬下の歯科医院において収入減の最大のリスクはキャンセルなのです。
 キャンセルに対する認識は、歯科医院側と患者の皆さんの側とでかなり異なっています。
 例えばホテルでは、キャンセルに対してキャンセル料が発生し、「2~3日前から20%前後、前日50%前後、当日・不泊100%」という割合が一般的です。
 国民生活センターは、レストランの無断キャンセルなどではキャンセル料が発生し得ると説明していて、準備済みの料理代などを請求する店もあるとしています。
 しかし保険医療機関では、一般的に当日キャンセルや無断キャンセルであっても、患者の皆さんに対しキャンセル料を請求することはありません。
 そのせいか、患者の皆さんのキャンセルに対する認識が、ホテルやレストランのそれに比べて甘いのではないかと思うことがしばしばあります。
 ほとんどの歯科医院では、予約制をとっています。
 これは、歯科診療の多くが緻密な処置であり、それなりの時間と手間をかけなくてはきちんとした結果を得られないからです。
 時々、「ちょっと治してくれればいいから」という、ある意味難しい注文をする方がいますが、ちょっとの手間で行った処置では決して良い結果は得られません。
 精魂込めて行った処置でさえ、結果が思わしくないこともあるのですから。
 もちろん、時には直前に急用が入り、予約をキャンセルすることもあり得ます。それは仕方のないことです。
 しかし、あまりに頻繁に直前のキャンセルや無断キャンセルをする方の場合、今後正規の予約をお取りしないことや、診療自体をお断りすることもあります。
 医師法、歯科医師法には応召義務があり、特別な事由がない限り診療を拒否することはできないと法律で決められています。
 しかしその特別な事由には、「患者の迷惑行為」というものが挙げられており、「度重なる無断キャンセルも迷惑行為に該当すると考えられる。 あまりにも悪質なキャンセルを繰り返す患者に対しては治療を拒否することも可能。」となっています。
 つまり、度重なる無断キャンセルは迷惑行為とされているのです。

 そこで患者の皆さんにお願いがあります。
・予約日はカレンダー、手帳等に記載し、忘れないようにしてください。
・予約の時間に来れないことがわかったら、できるだけ早めに医院にご連絡ください。
・仕事の都合等で頻繁に直前のキャンセルが起こりうる場合は、あえて予約を取らず、来院できる日にご連絡ください。空いている時間をご案内いたします。
 
 診療は、患者の皆さんと医院との信頼関係で成り立っています。
 信頼関係がない状況を想像してみてください。
 患者の皆さんはご自分が何をされるか不安だったり、処置をする側はどんなクレームをつけられるか疑心暗鬼の状態だったら、とても良い医療などできません。
 私たちも、できるだけ快適な環境で皆さんに医療を提供したいと思っています。
 気になることがあったら、是非こちらに直接お伝えいただくか、玄関のご意見ポストにご投函ください。皆さんと、よい時間と空間を共有したいと考えています。


このページを閉じる

Copyright 2004 Aoba Dental Clinic All Rights Reserved.